新しい木の使い方 CLTの可能性。

木造プラットホームオフィス

 本建物は、地域に根差した総合建設会社の新社屋である。ものづくりの専門家たちが各地の現場や客先へ出動してゆく拠点であり、木造軸組フレームによる大空間の中に2棟の県産材CLT床組を入れ子状に配置した、駅のプラットホームを思わせる単純明快な構成・デザインが特徴である。
一般に、事務所に求められる柱のない広い空間を合理的につくるためには鉄骨造がセオリーとされるが、低層で1,000㎡程度までならば耐火上の制約が少なく、木造は十分選択肢となり得る。ここでは木造大スパンに加えて建築基準法の新工法であるCLT造を採用し、ものづくり会社としての技術力・こだわりを体現するモデルハウス的役割を意図して計画した。

 10m×40mの軸組大空間は、張弦梁と必要最小限の階高設定により一般の流通規格寸法の中断面集成材のみで構成している。またプランの単純化・モジュール化を徹底することで、CLTパネル寸法の統一、サッシや断熱材などの標準化された高性能な住宅用建材の活用、歩留まりの最適化を図り、構造・施工・コストの合理性を追求した。
吹抜けの一体空間を活かした重力換気や自然採光、省エネ機器、太陽光発電により、建物の消費エネルギーとしてはNearly ZEBを達成している。
軸組の繊細で複雑な架構美と、その対極にあるCLTのフラットでマッシブな木の塊がひとつの空間に同居しており、同じ木を使った構造の表情の違いや対比の妙を感じることのできる今までにない木造空間となった。
加藤工務店新社屋全景
加藤工務店新社屋正面外観 検討模型

駅のプラットホームを思わせるシンプルな外観

設計時の検討模型

加藤工務店新社屋全景
加藤工務店新社屋正面外観 加藤工務店新社屋模型

軸組大空間の中にCLT床組を入れ子状に配置した吹抜の「プロジェクトラウンジ」

オフィススペース ミーティングスペース

張弦梁による開放的な空間

会議室

CLT現しのオフィススペース CLTのトンネル

CLT現しのオフィススペース

CLTのトンネル